“貴(き)” の例文
「おい猪の、俺(おら)がゐるのが貴(き)さんには見えんのか。」と、旦那は猪之介の背中から怒りの聲を浴せかけた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「なにを。証拠はちゃんとあるじゃ。また帳面にも載(の)っとるじゃ。貴(き)さまの悪い斧(おの)のあとのついた九十八の足さきがいまでもこの林の中にちゃんと残っているじゃ。」
かしわばやしの夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「身、五民ノ外ニ処シテ、或ハ貴(き)ニヨク、或ハ賤(せん)ニヨシ、上ハ王皇ニ陪シテ栄ト為サズ、下ハ乞児(きつじ)ニ伍シテ辱ト為サズ、優游シテ以テ歳ヲ卒(をは)ルベキモノ、唯我ガ技ヲ然(しか)リト為ス……エヘン」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平岡(ひらをか)の家(いへ)は、此十数年来の物価騰貴(き)に伴(つ)れて、中流社会が次第々々に切(き)り詰(つ)められて行(ゆ)く有様を、住宅(じうたく)の上(うへ)に善(よ)く代表してゐる、尤も粗悪な見苦(みぐる)しき構(かま)へである。とくに代助には左様(さう)見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「虔十、貴(き)さんどごの杉伐(き)れ。」
虔十公園林 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)