調戯からかい)” の例文
旧字:調戲
その時自分は「岡田君この呉春ごしゅん偽物ぎぶつだよ。それだからあの親父おやじが君にくれたんだ」と云って調戯からかい半分岡田を怒らした事を覚えていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お前がその女に悪戯いたずらをされるのは、されるような因縁がついているんだから仕方がねえ、ちょっと調戯からかいにやってみたんだから、根に持つなよ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
九女八は、若いもの調戯からかいたがる台助のくせを知っているので、口へは出さないが、腹の中でそう思っている。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
年長の友人が誘っても私が応ぜぬので、調戯からかいに、私は一人で堕落して居るのだろうというような事を言った。恥かしい次第だが、推測通りであったので、私はかっとなった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
冷かしや調戯からかいずらに俺あいうのじゃねえ。心安立こころやすだてにペラつく口なんだ。何をおめえ、女房にもう直きなる女が、亭主ときまった男に首ったけなのは、この上なしいことなんだ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
調戯からかい半分に田辺の姉さん達から聞かせられても——兄は商法の用事で小父さんの家へよく出入したから——でも彼は大人の情事いろごとなぞというそういうことに対して何処を風が吹くかという顔付を
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
伝法院の唯我教信が調戯からかい半分に「淡島椿岳だからいっそ淡島堂に住ったらどうだ?」というと、洒落気しゃれけと茶番気タップリの椿岳は忽ち乗気のりきとなって、好きな事仕尽しつくして後のお堂守どうもりも面白かろうと
自分はやがてまたお重が呼び出される事と思って、調戯からかい半分茶の間の方に出て行った。お重は一生懸命に会席膳かいせきぜんを拭いていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
古市くんだりまでこうしてお調戯からかいにお下りあそばしまする、たいも売れれば目刺めざしも売れる、それで世の中は持ったものでございますね、よくしたものでございますよ。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
山本さん——支那しなの方に居る友人の間には、調戯からかい半分に
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
するとその友達が調戯からかい半分に、君のような剽軽ひょうきんものはとうてい文官試験などを受けて地道じみちに世の中を渡って行く気になるまい、卒業したら、いっその事思い切って南洋へでも出かけて
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この田舎娘の調戯からかい半分に言ったことは比佐を喫驚びっくりさせた。
足袋 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
母はまた始まったという笑のうちに自分を見た。自分はまた調戯からかいたくなった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつもなら調戯からかい半分に、あなたは何かしかられて、顔を赤くしていましたね、どんな悪い事をしたんですか位言いかねない間柄なのであるが、代助には三千代の愛嬌あいきょうが、後からその場を取り繕う様に
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助はチョコレートを二杯命じて置いて誠太郎に調戯からかいだした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どうだい、別嬪べっぴんだろう」と宗近君は糸子に調戯からかいかける。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)