語音ごいん)” の例文
ああお変りもなくと、人々は眼をこらして老公の健康を、その皮膚やまなざしやひげ語音ごいんや、あらゆる容子ようすからさぐり見るのだった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨脚あめあしがややはげしくなり、空は暗くばかりなっていく。宿直とのいの侍が怪しい語音ごいんで家の外を見まわりに歩き
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
西比利亜では犬を「エンヌ」といふさうで語音ごいんや似通つておる。或は日本犬と同種族であるまいかといふ説があるさうだが、如何さまもありさうな事だわい
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
かれらの全身は毛に蔽われてさながら猿のごとく、その頭の天辺だけは禿げたようになって一本の毛も見えなかった。何か言うようでもあるが、その語音ごいんはもとより判らない。
ただその英文の語音ごいんを正しくするのにくるしんだが、れも次第にいとぐちひらけて来ればれはどの難渋でもなし、つまる処は最初私共が蘭学をてゝ英学に移ろうとするときに、真実に蘭学を棄てゝ仕舞しま
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小声だが、強い語音ごいんである。吉保には脅迫と聞えるぐらい、何か、底気味のわるいものすらふくんでいた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とほのかに言うのが夕顔の声そのままの語音ごいんであった。源氏は微笑を見せながら
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
玉枝とよばれたこの女は、その美貌や肉づきでは、ほとんどあの花世と変りがないほど瓜二うりふたつであるが、ただ口をきくと、その語音ごいんはまるで花世とは違っている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど、そう聞けば、この人々には、特有ななまりがある。しかもその訛りはすぐ自分の少年時代を思い出させるなつかしい郷里の土のにおいまで持っている語音ごいんだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
めずらしくその言葉は、上方の語音ごいんである。鈴野はハッと思って、濡れ手のまま立った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また何か、変った語音ごいんを出していう。意味はまったく分らない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、常と変らぬ、穏やかな語音ごいんで云った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)