からうた)” の例文
おりたつ後姿うしろすがた見送みおくものはお八重やへのみならず優子いうこ部屋へや障子しようじ細目ほそめけてはれぬ心〻こゝろ/\を三らう一人ひとりすゞしげに行々ゆく/\ぎんずるからうたきゝたし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ささなみの大津の宮に人となり、唐土もろこし学芸ざえいたり深く、からうたも、此国ではじめて作られたは、大友ノ皇子か、其とも此お方か、と申し伝えられる御方。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
その時、間近で若々しい声でからうたうたう声が聞こえて来た。清らかな美しい声である。数馬はハッと眼を開き、よみがえったような気持ちと共に声のする方をすかして見た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わしは和子に此のからうたを教えて上げる。此れは唐土もろこし白楽天はくらくてんと云う人の作ったもので、子供にはむずかし過ぎて意味が分らないであろうが、そんなことはどうでもよい。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
近江の大津の宮の内に成人なされて、唐土の学問にもいたり深くおありになりました。此国で、からうたをはじめて作られたのは、大友皇子様か、其ともお方かと申し伝へて居るほどで御座ります。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)