角逐かくちく)” の例文
これはどうもただのけんかではなくて、やっぱり彼らの種族を増殖するための重大な仕事に関係した角逐かくちくの闘技であるらしく思われる。
藤棚の陰から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これは手錠に懲りたからでもあるが、又馬琴の大才を恐れ、同じ方面で角逐かくちくすることの、不得策であることを知ったからでもある。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
日本を日本だけにしか考えられない狭量と狭鼻がこの中で角逐かくちくし、この中で私業の争いを繰り返して来た群雄割拠はそれであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私が訊いたのは何も背丈せたけのことばかりではない。西洋人にして角逐かくちく出来る体力や気魄きはくついて探りを入れたのである。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
将来、大いにその泰西文明と角逐かくちくしてその右に出ずるを得べき力を有するとは確信しているけれども、今日のままでは、未だ雁行だもするを得ぬ状態にいる。
列強環視の中心に在る日本 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
戸外こぐわいスポオツにしても、野球やきう勿論もちろんだが、近頃ちかごろそれと人氣にんき角逐かくちくしかけて蹴球しうきうにしてもその今日こんにちるまでには慶應義塾蹴球部けいおうぎじゆくしうきうぶかくれたるなが努力どりよくがあつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
イタリアの市場において仏国の製品と角逐かくちくせしめんとしたるがごとき、また近来東洋ことに日本・シナの市場において東洋の旧主人たる英国をばその貿易の戦争において圧倒せんと企てたるごとき
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
すなわち其の至るところ又如何いかなるを知らず、近代を以て之を言えば、欧陽少卿おうようしょうけい蘇長公そちょうこうはいは、しばらく置きて論ぜず、自余の諸子、之と文芸のじょう角逐かくちくせば、たれか後となりいずれか先となるを知らざる也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つくづく見ていると、この紙片に魂がはいって、ほんとうに二匹の獅子が遊び戯れあい角逐かくちくしまた跳躍しているような幻覚をひき起こさせた。
錯覚数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
郭汜かくし李傕りかくとが互に猜疑さいぎしあって、血みどろな角逐かくちくを演じ出したのは、まさに、彼の思うつぼであったが、帝と皇后の御身に、こんな辛酸が下ろうとは、夢にも思わなかったところである。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西洋人に伍して角逐かくちく出来る体力や気魄について探りを入れたのである。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それは、多くの場合に二つか三つの昇降機がほとんど並んであい角逐かくちくしながら動いている場合が多いということである。
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
他方ではまた他の科学国と対等の力をもって科学的な競技場上にあい角逐かくちくしなければおそらく一国の存在を確保することは不可能になるであろうと思われる。
北氷洋の氷の割れる音 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
眩しいような真昼の光の下にあい角逐かくちくし、駈けり狂うて汀をめぐる。汀の草が踏みしだかれて時々水のしぶきが立つ。やがて狂い疲れて樹蔭や草原に眠ってしまう。
ある幻想曲の序 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)