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覘
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ねらひ
三四郎はそれを見当に
覘を付けた。——舞台の
端に立つた与次郎から一直線に二三
間隔てゝ美禰子の
横顔が見えた。
ロミオ はて、
其覘は
外れた。
戀愛神の
弱弓では
射落されぬ
女ぢゃ。
處女神の
徳を
具へ、
貞操の
鐵の
鎧に
身を
固めて、
戀の
稚い
孱弱矢なぞでは
些小の
手創をも
負はぬ
女。
彼は
内職に
飼つた
豚が
近頃子を
生んだので
他人が
覘はせぬかと
懸念しつゝあつたのである。おつぎは
何處でも
構はぬと
土手の
篠を
分けて
一つ/\に
蜀黍の
穗を
力の
限り
水に
投じた。