見易みやす)” の例文
「何でチウ事もあらへんけんど……アレ位のこと……アンマリ見易みやすうて見物に受けよらんけに、止めとうなったんや」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何人といえども見易みやすき、これも単純にして深刻なる本能の発動に過ぎないのであります。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この二つが果して両立するものかどうか?———今から思うと馬鹿ばかげた話ですけれど、彼女の愛に惑溺わくできして眼がくらんでいた私には、そんな見易みやすい道理さえが全く分らなかったのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
季節きせつむねしくつひやすことが一にちでも非常ひじやう損失そんしつであるといふ見易みやす利害りがい打算ださんからかれ到頭たうとうまかされてまた所懸命しよけんめい勞働らうどう從事じうじした。かれはもう卯平うへい一言ひとことくちかなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
吾輩の爪はぜん申す通り皆うしろ向きであるから、もし頭を上にして爪を立てればこの爪の力はことごとく、落ちる勢にさからって利用出来る訳である。従って落ちるが変じて降りるになる。実に見易みやすき道理である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)