行悩ゆきなや)” の例文
旧字:行惱
たださえ行悩ゆきなやむのに、秋暑しという言葉は、残暑のきびしさより身にこたえる。また汗の目に、野山の赤いまで暑かった。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伊賀いが上野うえのは旧藤堂とうどう侯の領分だが藩政の頃犯状はんじょうあきらかならず、去迚さりとて放還ほうかんも為し難き、俗に行悩ゆきなやみの咎人とがにんある時は、本城ほんじょう伊勢いせ安濃津あのつ差送さしおくるとごう
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
猟夫かりゅうど樵夫きこりの荒くれ男ですらこれを魔所と唱えて、昼も行悩ゆきなや三方崩さんぽうくずれの悪所絶所を、女の弱い足で夜中に越そうと云うのは、余りに無謀で大胆であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
指すかたもあらでありくともなくをうつすに、かしらふらふらと足のおもたくて行悩ゆきなやむ、前にくも、後ろに帰るも皆見知越みしりごしのものなれど、たれも取りあはむとはせできつきたりつす。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
外国あちらでも一般の見物にはイブセンやマアテルリングなどは受けないのだそうですな、それで自由劇場のような団隊だんたいが沢山あるが、それも思わしい决算けっさんを見ないで行悩ゆきなやみ勝ちだという。
当今の劇壇をこのままに (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その不意に立停たちどまったのを、行悩ゆきなやんだと思ったらしい、花売はなうりかろく見返り
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)