藍微塵あゐみぢん)” の例文
藍微塵あゐみぢん素袷すあはせ、十手を懷に隱して、突かけ草履、少し三枚目染みる子分のガラツ八を案内に、錢形の平次は淺草の隆興寺へ飛んで行きました。
二ツ三ツこえ中脊ちうぜい中肉ちうにくにしていろしろ眼鼻立めはなだちそろひし美人ながら髮の毛の少しうすきは商賣上しやうばいあがりの者とども本甲ほんかふ櫛笄くしかうがひさしぎんかんざしに付たる珊瑚珠等さんごじゆとういづれも金目の物なり衣類は藍微塵あゐみぢん結城ゆふき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
吹きちらふ物みな涼し朝東風あさこちや石塔うへの藍微塵あゐみぢんの花
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
藍微塵あゐみぢんの意氣な袷を着て居りますが、身體も顏も泥だらけ、左の手に龕燈を提げ、右の手に一梃のをのを持つて居るのは一體何をしようと言ふのでせう。
吹きちらふ物みな涼し朝東風あさこちや石塔うへの藍微塵あゐみぢんの花
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
藍微塵あゐみぢんあはせを、膝が破れさうに坐つて、此時代では何よりの贅澤とされた銀の吸口すひくちのチヨツピリ付いた煙管で煙草盆を引寄せる平次は、若くて好い男ながら
藍微塵あゐみぢんの狹い袷の胸をはだけて、かけ守袋まもりと白木綿の腹卷を覗かせた恰好で、縁側からポンと飛降ります。
藍微塵あゐみぢんの七三に取つたすそを下ろして、少し笑まし氣にかたむけた顏は、全く利助の子分には勿論ない人柄です。
藍微塵あゐみぢんを狹く着て、罌粟玉絞けしだましぼりの手拭に顏を包んだイナセな兄イ、引き剥ぐやうにそれをとると、高い鼻、切の長い眼、淺黒い顏、何となく凄味にさへ見える好い男です。
錢形の平次は、相手の眞意をはかり兼ねて、そつと顏を上げました。二十四、五の苦み走つた好い男、藍微塵あゐみぢんの狹いあはせが膝小僧を押し隱して、彌造やざうに馴れた手をソツと前に揃へます。