蓮台れんだい)” の例文
まかり間違ったらひとさまの生眼も引きぬこうというお兄哥さんなんだ。そんなことで蓮台れんだいに引きのせようたって、そうはいかねえや。
天人は琵琶びわを持って静かに蓮台れんだいの上にすわっている。素朴な点は鳳凰にゆずらない。また鳳凰と同じく顔と手が特に大きい。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
たとえば百済くだら観音は仕切った一室にただひとり安置されてある。新しい天蓋てんがい蓮台れんだいもつくられた。すべては美々しくよそおわれ、花もささげられてある。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
廣介は千代子の手を取って、数人の裸女によって作られた蓮台れんだいの上におし上げ、自分もそのあとから、千代子と並んで、肉の腰掛に座を占めました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一人前払ッテオレハ蓮台れんだいデ越シ、荷物ハ人足ガ越シタガ、水上ニ四人並ンデ、水ヲヨケテ通シタガ、心持ガヨカッタ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
我は古き畳の上に、忠勤なる古帽はすすびし壁の上に、各々かくて人生の怱忙そうばうしばしのがれて、胸の波さへ穏やかなる安心の蓮台れんだいに休らふを得るに至れる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その仏様は胡坐あぐらをかいて蓮台れんだいの上にすわっていた。太い錫杖しゃくじょうを担いでいた、それから頭にかさかぶっていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とこの間と、くろがきの大黒柱を境にしてならんでいる仏壇の奥に、金色きんしょく燦然さんぜんたる阿弥陀如来あみだにょらいが静まりかえって、これも黄金おうごん蓮台れんだいのうえに、坐禅を組んでいる。その下に、朱塗りの袋戸棚がある。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
みんな土葬でひつぎは三尺程高い箱棺で、それに蓮台れんだい天蓋てんがいとはお寺に備えつけのものを借りて来て、天蓋には白紙を張り、それに銀紙でまんじをきざんで張りつけ
この寺は由緒ゆいしょのある寺だそうでところどころに大きな蓮台れんだいの上にえつけられた石塔が見える。右手のかたさくを控えたのには梅花院殿ばいかいんでん瘠鶴大居士せきかくだいこじとあるから大方おおかた大名か旗本の墓だろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)