菜飯なめし)” の例文
... 捕まへてなもした何だ。菜飯なめしは田楽の時より外に食ふもんぢやない」とあべこべに遣り込めてやつたら「なもしと菜飯とは違ふぞな、もし」と云つた。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その細君もこの花見に私どもの一行に加ったのであったが、後に継母の親戚の山本が来て、『松田の箱入美人を、菜飯なめし田楽へ連れて行ったのはひどいじゃないか』
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
此所にはまた菜飯なめし茶屋という田楽でんがく茶屋がありました。小綺麗こぎれいねえさんなどが店先ででんがくをってお愛想をいったりしたもの、万年屋、山代屋やましろやなど五、六軒もあった。
薬師の横丁をのぞくと、菜飯なめし、奈良茶飯、木の田楽でんがく蒲焼かばやきなど、軒並びの八けん団扇うちわをハタかせて、春の淡雪のような灰を綺麗な火の粉の流れる往来へ叩いております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とうさんがあそびにきましたら、數衛かずゑ大層たいそうよろこびまして、にかけたおなべ菜飯なめしをたいてれました。それからお茄子なす味噌汁おみおつけをもこしらへまして、おわかれに御馳走ごちさうしてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くじとりて菜飯なめしたたかす夜伽よとぎかな 木節
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
畑打に替へて取つたる菜飯なめしかな 嵐雪らんせつ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
... つらまえてなもした何だ。菜飯なめし田楽でんがくの時より外に食うもんじゃない」とあべこべに遣り込めてやったら「なもしと菜飯とは違うぞな、もし」と云った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
広小路に菜飯なめし田楽でんがくを食わせるすみ屋という洒落しゃれた家があるとか、駒形の御堂の前の綺麗きれい縄暖簾なわのれんを下げた鰌屋どじょうやむかしから名代なだいなものだとか、食物くいものの話もだいぶ聞かされたが
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)