うしとら)” の例文
吾々の一生を支配している「うしとら金神こんじん」というのは、実にこの「心理遺伝」の原則であるぞよ。今にドエライ証拠を出すぞよ……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人の立ち去りたる隙に、うしとら方に向ひて、我山の三宝助け給へと、手を摺りて祈請し給ふに、大なる犬一匹出で来て、大師の御袖を喰ひて引く。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うしとらの方角には池があり、あたり樹林が茂って、寺を建て永く仏に仕えるには、まことに恰好な環境である。近村の人々の協力により間もなくそこへ寺が建った。
老狸伝 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
「あれ、彼処あすこですわ。」と玉野がゆびさす、大池おおいけうしとらかたへ寄るところに、板を浮かせて、小さな御幣ごへいが立つて居た。真中の築洲つきずつるしまと言ふのが見えて、ほこら竜神りゅうじんまつると聞く。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
師走しわすからこのかた湿りがなく、春とはほんの名ばかり、筑波つくばから来る名代のからッ風が、夕方になるとうしとらへまわり、こずえおろしに枯葉を巻き土煙つちけむりをあげ、斬りつけるようにビュウと吹き通る。
京橋口定番の詰所の東隣は焔硝蔵えんせうぐらである。焔硝蔵とうしとらすみの青屋口との中間に、本丸に入る極楽橋ごくらくばしが掛かつてゐる。極楽橋から這入はひつた所が山里で、其南が天主閣、其又南が御殿である。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
尼が草庵は嵯峨釈迦堂よりうしとらかた、大沢の池へ行く路の傍の、とあるやぶかげにあって、部屋は僅かに二た間しかない怪しげな藁家わらやの、廣い方の一と間を佛間にてゝ、あさゆう佛に仕えながら
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
蔵王堂のうしとらなる
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右に道路、左に小川、南に池、北に丘、うしとらの方角に槐樹のあるのは、悪気不浄を払うためらしい。青々とした竹林が、屋敷の四方を囲んでいるのは、子孫に豪傑を出す瑞象だ。
天主閣の音 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あれ、あすこですわ。」と玉野がゆびさす、大池をうしとらかたへ寄る処に、板を浮かせて、小さな御幣ごへいが立っていた。真中まんなか築洲つきずに鶴ケ島というのが見えて、ほこらに竜神をまつると聞く。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
即ち東南には運気を起し、西北には黄金のいしずえを据える。……真南に流水真西に砂道。……高名栄誉に達するの姿だ。……ひつじさるたつみに竹林家を守り、いぬいうしとらに岡山屋敷に備う。これ陰陽和合の証だ。
鵞湖仙人 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)