船暈せんうん)” の例文
地中海にはひつて初めて逆風に遇い、浪の為に一時間五マイルの速力を損失する日が二日ふつか程つづいた。ともの方の友人は大抵僕の室へ来て船暈せんうんを逃れて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
このうちとどまりて憂目うきめを見るは、三人みたり婦女おんな厄介やっかい盲人めしいとのみ。婦女等おんなたちは船の動くととも船暈せんうんおこして、かつき、かつうめき、正体無く領伏ひれふしたる髪のみだれ汚穢けがれものまみらして、半死半生の間に苦悶せり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは日本人の体質にも習慣にもるのであらうが、読書などにるとあと船暈せんうんを感ずる原因に成り易い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
実は私は返事申し上ぐるさへ能はぬばかりに船暈せんうんを覚えりしにさふらへば、その時前に運ばれしキヤベツの料理を少し戴きしまま、失礼致すべしとて船室に帰り申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)