至難しなん)” の例文
平和な海面なら、綱を持って対岸たいがんまで泳ぎつくことは、至難しなんでない、だがあらしのあとの海は、まだ獰悪どうあくである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
今やめられて新たに雇い入れることは先ず至難しなんであるので、彦太郎は狼狽ろうばいした面持で、そんなことなら相談してくれたらよいじゃないか、長年いっしょに仕事をして来て
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
すりかえの謀計ぼうけいである。君の鋳物などは最後は水桶みずおけの中で型のどろを割って像を出すのである。準備さえ水桶の中に致しておけば、容易に至難しなんの作品でも現わすことが出来る。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
堀部、奥田、吉田、原、あのへんを討ってしまうことだって、こっちの気ぐみ一つでは至難しなんとも思えない。そのほうがれほどやりよいか知れないのにと、いつも彼は思う。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
實際じつさい地震ぢしん豫知問題よちもんだい解決かいけつ至難しなんわざであるに相違そういない。しかしながらけつして不可能ふかのうのものとはおもはない。著者ちよしやごときは、此問題このもんだいすでにある程度ていどまでは机上きじようおい解決かいけつせられてゐるとおもつてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)