自烈度じれった)” の例文
……自烈度じれったいと云って、これ位自烈度い話はなかろう。……これがわかれば一躍、世界一の流行作家になれるかも知れないんだが……。
探偵小説の正体 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いつもの癖で、椅子の中に深く身を沈めると、中禿ちゅうはげの頭を撫で上げながら、自慢の長いひげ自烈度じれったそうにヒネリ上げヒネリさげした。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と云いながら老ドクトルは、いつの間にか昂奮してしまったらしく自烈度じれったそうに拳固を固めて両膝をトントンとたたいた。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自烈度じれったいお兄さんたらないわ。あのね……あたし今夜貰った契約の前金で変装して今夜のお芝居見に行ったのよ。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬は驚いて狂気きちがいのようになって、一足飛びに飛び出しましたが、いつ迄も往来に出ずに同じ処ばかりぐるぐるまわっていますから、紅木大臣は自烈度じれったがって——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
又は年老としおいてタヨリになるを持ち得ない物淋しさ、情なさ、自烈度じれったさを、たまらない嫉妬心と一緒に飽く事なく新しい犠牲……若い、美しい一知に吹っかけて
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私の軍帽のひさしを見下して、マジマジと探るように凝視していたが、イクラ凝視しても、何度眼をパチパチさしても私の顔を見る事が出来ないのが自烈度じれったいらしかった。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「耶蘇教の婚礼なんてナンチいう、フウタラ、ヌルイ(風多羅ふうたらぬるい? 自烈度じれったいの意)モンや」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
老刑事のネチネチした老獪ずるい手段が、ホントウに自烈度じれったくて腹が立っていたのだから……。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何だかタヨリナイような——可笑おかしいような——自烈度じれったいような——のんびりしたような——面白いような——馬鹿馬鹿しいような——有意義なような——無意義なような——。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
姫は折角こんな有り難い事に出くわしながら、指一本指す事も出来ず、持ち主の来るのを待っていなくてはならぬのが、自烈度じれったくてたまらなかった。早く持ち主が来てくれればいい。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そこに行ってどうするというつもりもなかったけれども只何となく自烈度じれったかった。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのつまらない単調子さのうちにどことなく騒々しいような、淋しいような——面白いような、自烈度じれったいような気がする。人生の或る基調に触れて人の心をひきつけるようなところがある。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
最初の自烈度じれったい気持がなくなるために、その夢もおしまいになって目を醒ます。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのスベスベした肌の光りが無性に悲しく、腹立たしく、自烈度じれったくなった。
微笑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
背丈けが普通なみの女以上にスラリとしているので、チエ子の手を引いて行くのはいくらか自烈度じれったいらしかったが、それでも、二人とも新しいフェルトの草履ぞうり穿いて、イソイソとしていたので
人の顔 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
遺言書なんてものはコンナ書きにくい、自烈度じれったいものとは知らなかった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その妻女のツル子というのは、頑固な、グロテスクな顔をした蟹口とは正反対に江戸前のスッキリした別嬪べっぴんで、この上なしの亭主孝行、又蟹口も自烈度じれったいくらいのかかあ孝行というのが評判であった。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あるいは又、寝がけに「彼女に会いたいな」と思って眼を閉じていると、その一念の官能的な刺戟だけが眠り残っていて、彼女の処へ行きたくてたまらないのに、どうしても行けない自烈度じれったい気持を
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私にはこうしたスランプのって来るソモソモが薩張さっぱりわからないのです。書きたい事は山積していながら書けない。ペンを奪われて絶海の孤島に罪流されたような自烈度じれったさ。つまらなさ。淋しさ。
スランプ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
むしろその不自由を極めた……世にも自烈度じれったい方法でもって、大資本を背景にした民族的大犯罪に喰い下って、盲目滅法めくらめっぽうに闘って行かなければならなかったところに、怪事件の怪事件たる価値や風味が
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
吾れながら妙チキリンな自烈度じれったい気持になってしまったものです。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二三本白髪しらがまじった赤い鬚を、自烈度じれったそうにひねりまわした。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
戸塚は自烈度じれったそうにそこいらを見まわして舌打ちをした。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あまりの自烈度じれったさに顔色を青くして唇を震わした。
私は自烈度じれったくなって又問うた。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……ああ……自烈度じれったい……。
探偵小説の正体 (新字新仮名) / 夢野久作(著)