胴服どうふく)” の例文
兵助はもう六十に近い温容な山侍で、いつも胴服どうふくの背なかを丸くして、坐禅をくむように手を重ねたきりである。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて往来おうらいに足音がした。ボブは帰って来た。わたしの運命が決められた。胴服どうふくを着て油じみたぼうしをかぶったぶこつな顔つきの船乗りが、ボブといっしょに来た。
この暑気に、虎の皮の大衿おおえりのついた緋羅紗ひらしゃ胴服どうふくを着こんでいるのが、馬鹿らしくてならない。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まとっているのは胴服どうふくであったが、決して唐風のものではなく、どっちかというと和蘭陀オランダ風で、襟にも袖にも刺繍がある。色目は黒で地質は羅紗、裾にも刺繍が施してある。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とおどりだしたのは、胴服どうふく膝行袴たっつけをはいた異形いぎょうな男——つづいて松明たいまつを口にくわえ、くさりにすがって三によじてきたのは、味方みかたと思いのほか、さるのような一少年。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまともした行燈あんどんを前にだして、しずかに席についたその男は、するどい両眼に片鼻かたはなのそげた顔をもち、くまの毛皮の胴服どうふくに、きざざや小太刀こだち前挟まえばさみとなし、どこかにすごみのあるすがたで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そろいもそろった荒くれ男ばかりが十四、五人、蔓巻つるまき大刀だいとうに、かわ胴服どうふくを着たのもあれば、小具足こぐそくや、むかばきなどをはいた者もあった。いうまでもなく、乱世らんせいうらにおどる野武士のぶし群団ぐんだんである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外出する様子におゆうは驚いて、布子ぬのこ胴服どうふくを厚く兄の身へ着せた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ゆう。わしの胴服どうふくを」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)