背恰好せかっこう)” の例文
した、同じ背恰好せかっこうの、しかも顔まで同じ人が、ほかにいるとも思えませんし、また僕が起きながら夢を見ていたとも考えられませんからね
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
気のせいか、墨江には、その編笠の背恰好せかっこうが、今もふと、胸の中で嫌な気持に思い出されていた大牟田公平そっくりに見えた。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皆さんがあるいは心づかれないかと思うことは、人の物ごし背恰好せかっこうというものが、麻の衣の時代には今よりも見定めにくかったということである。
かはたれ時 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はい。その二人は、どちらも顔付きから智恵や学問や背恰好せかっこう、髪の毛の数まで、一分一厘違わぬので御座います。で御座いますから、どちらが王様の御妃になる運を
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
観化流の剣豪けんごう茨右近も、見たところは、神尾喬之助と同じ背恰好せかっこうの、ほっそりしたやさおとこである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その宰領の背恰好せかっこうが、どうやら山崎譲に似ているのも道理、声を聞けば、やっぱり山崎譲です。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
別に必要はないけれども、その着つけ、背恰好せかっこう、容貌、風采、就いてらるべし。……
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
りきと呼ばれたるは中肉の背恰好せかっこうすらりつとして洗ひ髪の大嶋田おおしまだに新わらのさわやかさ、頸元えりもとばかりの白粉もなく見ゆる天然の色白をこれみよがしにのあたりまで胸くつろげて
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
提灯の薄明りで夜目にはシカと解らなかったが、背恰好せかっこうが何となく似ていたので、「大杉じゃないか知らん、」と、ハッと思って急に不安になったので、大杉の家へ曲る角の夜警の集まりへ行った。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
黒い塀の所へ黒い人間が、ジッと立っていたのだから、ウッカリ気がつかなかったのも当然で、茶柄ちゃづかの大小、銀鐺ぎんこじり、骨太だがスラリとして、鮫緒さめお雪踏せったをはいている背恰好せかっこう
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帽子も二重廻にじゅうまわし背恰好せかっこうも後から見るとまるで同じなんだけれど、違った人なのさ。わたし、あんまり気まりがわるいんで、失礼とも何とも言えないで、真赤まっかになってただ辞儀じぎをしたわ。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)