老中ろうじゅう)” の例文
そこに待つこと三十分ばかり。その間に、老中ろうじゅう初め諸大官が、あるいは徒歩、あるいは乗り物の輿こしで、次第に城内へと集まって来た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その間に、一方では老中ろうじゅう若年寄衆へこの急変を届けた上で、万一のために、玄関先から大手まで、厳しく門々を打たせてしまった。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
阿部家では抽斎の歿するに先だつこと一年、安政四年六月十七日に老中ろうじゅうの職におった伊勢守正弘が世を去って、越えて八月に伊予守正教まさのりが家督相続をした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これも必要なりれも入用なりとて兵器は勿論もちろん被服ひふく帽子ぼうしの類に至るまで仏国品を取寄とりよするの約束やくそくを結びながら、その都度つど小栗にははからずしてただち老中ろうじゅう調印ちょういんを求めたるに
徳川の儒臣林大学頭はやしだいがくのかみは、世々よよ大学頭にして、その身分は、老中ろうじゅう、若年寄の次にして旗下の上席なれども、徳川の施政上に釐毫りごうの権力を持たず、あるいは国家の大事にあたりては
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あいつは青いかおをして書物と首っ引きをしていたのだから、相当に理窟は言えるようになったろうけれど、それよりもあいつの得手えては上役に取入ることだ、老中ろうじゅうあたりに縁があって
「征夷大将軍の江戸城に於ては、紙屑買ただ一人を、老中ろうじゅうはじめ合戦の混乱ぢや。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御側用人おそばようにん、お坊主附添いでまず老中ろうじゅうの用部屋まで運び入れ、用部屋から時計とけい坊主ぼうず、側用取次と順々に送られ、お待ちかねの将軍が、これをうつわに盛って、今年の雪は、ことのほか冷たいの
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
便室べんしつ老中ろうじゅうが、城内で、親しい者と話をする小部屋)のふすまを開けると
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
嘉永二年三月七日に、抽斎は召されて登城とじょうした。躑躅つつじにおいて、老中ろうじゅう牧野備前守忠雅ただまさ口達こうたつがあった。年来学業出精につき、ついでの節目見めみえ仰附けらるというのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大島守おおしまのかみが、此の段、殿中に於いて披露に及ぶと、老中ろうじゅうはじめひたいを合せて
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
藩主阿部正弘が老中ろうじゅうになっているので、薦達せんたつの早きを致したのだとさえ言われた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)