羽掻はがい)” の例文
それは此間から黒雲五人男に狙われて、平次のところへ逃げ込み、銭形の羽掻はがいの下で暮して居る、菊屋の山之助のことだったのです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と入る。たもとすがって、にえの鳥の乱れ姿や、羽掻はがいいためた袖を悩んで、ねぐらのような戸をくぐると、跣足はだしで下りて、小使、カタリと後を
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤髯あかひげの大きなあぶらぎったでぶでぶの洋服男が一つ現われて、いきなり、裸体婦人の後ろから羽掻はがいじめにして、その髯だらけの面を美人の頬へ押しつけて、あろうことか
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それはこの間から黒雲五人男に狙はれて、平次のところへ逃げ込み、錢形の羽掻はがいの下で暮してゐる、榮屋の山之助のことだつたのです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
やれ打つ、へへへ、小鳥のように羽掻はがいあおつ、雑魚ざこのようにねる、へへ。……さて、騒ぐまい、今がはそで無い。そうでは無いげじゃ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかもその逃げぶりが蹌々踉々そうそうろうろうとして頼りないこと、巣立ちの鳥のような歩きぶりであります。手を伸ばせば、羽掻はがいじめになりそうな逃げぶりでありましたから老人は
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お近ははぢも外聞も忘れた姿で辛くも喜三郎の手をのがれると、バタバタと椽側を踏み鳴らしながら、平次の羽掻はがいの下に飛び込むのでした。
むずと羽掻はがいをしめて、年紀としは娘にしていい、甘温、脆膏ぜいこう胸白むなじろのこのかもを貪食した果報ものである、と聞く。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
清澄の茂太郎は、無頼漢ならずもの羽掻はがいに締められて、進退の自由を失ってしまいました。せめて、口笛でも吹くだけの余裕があったならば、こういう時に、狼が来てくれたかも知れない。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
血気な男が、かかる折から、おのずから猟奇と好色の慾念よくねんおどって、年の頃人の妻女か、素人ならば手でなさけを通わせようし、夜鷹よたかならば羽掻はがいをしめて抱こうとしたろう。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
親分に内緒で勢子せこの一人に加はつたのは宜いが、獲物が親分の羽掻はがいの下に逃げ込んで、うつかり知らずに居る錢形平次の家へ、家搜しの一隊が乘込むやうな事になつては
……あなたと、ご一所いっしょ、私ども、氏神様のやしろなんじゃありませんか。三羽さんば羽掻はがいをすくめてまごついた処は、うまれた家の表通りだったのですから……笑事わらいごとじゃありません。と変です。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)