継母はは)” の例文
旧字:繼母
⦅若衆さん、あたしの継母ははを見つけて頂戴な! あたし、あなたになんだつて吝まずに差しあげますわ。きつと、お礼をしますわ。
「ハイ、丹波は、二世十方斎の名と、継母ははお蓮の方とを天下はれて手に入れようとの魂胆でございます。そのために、わたくしの……」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その一通は継母ははからのものであったが、他の一通は真白な横封筒で、差出人の名は書いてなく、その筆跡にも見覚えはなかった。
仙人掌の花 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
和歌子は親しみの少ない継母ははと義理の妹達とが、彼女の失敗を牙を磨いて待っている恐ろしい荊棘いばらの床に帰らねばならなかった。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
継母ははをつれた諸葛瑾しょかつきんが、呉の将来に嘱目しょくもくして、江を南へ下ったのは、さすがに知識ある青年の選んだ方向といっていい。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ニーナ 父も継母ははも、あたしがここへくるのは反対なの。ここは、ボヘミアンの巣窟そうくつだって……あたしが女優にでもなりゃしまいかと、心配なのね。
「お春は可哀想ですが、このままにしておくと、乳母のお霜も生きていないかもわかりません。お霜に万一の事があると、勇太郎の継母ははの私も——」
つまりその弁護士は僕と、僕の新婚の妻との間に子供が出来ないうちに、継母ははと共謀して、財産の横領を企てているのじゃないかと疑い得る理由があるのです。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私が何かにつけて、物事をひがんでいやしないかと、しょっちゅうそれを向うで僻んでいるの。父は継母ははに気兼ねして、私の事は何んにも口に出して言わないの。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
昌作はまた、若しもそれが信吾によつて為された事なら甚麽どんなにか不愉快を感じたらうが、何がなしに虫の好く吉野だつたので、その豪いことを誇張して継母ははなどに説き聞せた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
俺も継母ははが来てから十何年にもなるけれど、俺は三つきといっしょに暮したことがないもんだから、俺は俺の継母ほどいい継母というものは日本じゅうどこ捜したってあるまいと思ってたんだがね
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
道場へ帰ってからは、この座敷に源三郎のそばにつききりで、まだ継母ははお蓮様や峰丹波をはじめ、不知火の人たちには、姿ひとつ見せずにいる。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
老いたる従者や継母ははなどと一緒に、遠く山東の空から南へ流れ流れて来た頃の、あの時代のお互いのすがたや、惨風悲雨の中にあった家庭のさまが、瞬間
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひたむきに歩きまはつたの! 眼はといへば——見て頂戴——涙で曇つて、なんにも見えないの! 見つけて頂戴な、若衆さん、あたしの継母ははを見つけて頂戴な!……
……でも父は、今しがた継母ははといっしょに出かけたの。空が赤くって、月がもう出そうでしょう。で、あたし、一生けんめい馬を追い立てて来たの。(笑う)でも、うれしいわ。
その弁護士は非常に交際の広い、一種の世間師という評判です。く極く打算的な僕の継母ははもこの弁護士にばかりは惜し気もなくお金を吸い取られているという評判ですからね。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
御身もよく知っておられるとおり、自分は荊州の世継ぎと生れてはいるが、継母はは蔡氏さいしには、劉琮りゅうそうがあるので、つねにわしをころして琮を跡目あとめに立てようとしている。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
継母ははは、なんの力にもなってくれないどころか、丹波とぐるになって源三郎様を自分から遠ざけて、由緒ゆいしょあるこの道場を横領しようとするさえあるに、あろうことか
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
若衆さん、あたしの継母ははを捜して頂戴な! あたしの継母ははは、怖ろしい妖女ウェーヂマでしたの。あのひとのために、あたし娑婆では安らかな思ひをすることが出来ませんでしたの。
いつもだと僕の妻が喜ぶ事を絶対に好まなかった継母ははが、不思議なほど熱心に妻にすすめて故郷へ帰らせて、非常な上機嫌で駅まで送ったりした態度がドウモ可怪おかしいと思っていたところだったのです
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの丹波が継母ははうえと心をあわせて、司馬の家を乗り取ろうとしているなんてなんという恐ろしい……そのうえ、弟子どもの噂でふっとこの小耳にはさみましたところでは、あなた様を
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)