粗野そや)” の例文
たしかに、胡俗こぞく粗野そやな正直さのほうが、美名の影に隠れた漢人の陰険さよりはるかに好ましい場合がしばしばあると思った。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「何ですつて、私に?」と私は彼の熱心さに——特に彼の粗野そやな容子に——彼の眞實さを信じ始めながら、叫んだ。
なんとなく粗野そやで、しかも人を圧するような、えられない感じがする上に、日光はほとんどここへし込まず、土臭い有毒らしい匂いがそこらにただよって
粗野そやで、そそっかしいかぜは、いつやむとえぬまでにいて、いてつのりました。は、もはやをまわして、いまにもたおれそうになったのであります。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「人聞の悪い事を云うな、失敬な。君は実際自分でいう通りの無頼漢ぶらいかんだね。観察の下卑げびて皮肉なところから云っても、言動の無遠慮で、粗野そやなところから云っても」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主八の宗助は五十六七の粗野そやな男で、生れながら町人ではないらしく、手足の荒れ、肩幅の廣さ、どこから見ても勞働者あがりで、言葉にはひどい上方訛かみがたなまりがあります。
気まぐれな小鬼こおにめがわしの生命中に巣をっているようだ。わしの気質は自分の自由にならないのだ。わしは孤立無縁こりつむえん霊魂れいこんだ。人とやわらぐことのできない粗野そやな性格だ。わしはわしをのろう。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼らは粗野そやなり、しんに驚く
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
単于の長子・左賢王さけんおうが妙に李陵に好意を示しはじめた。好意というより尊敬といったほうが近い。二十歳を越したばかりの・粗野そやではあるが勇気のある真面目まじめな青年である。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
でも私は粗野そやな方が、おべつかなんぞよりはよつぽど好きですわ。