簒奪さんだつ)” の例文
あまり我意を押しつけようとなさると、天子の廃立に名分をかりて、董公ご自身が、簒奪さんだつはらがあるのではないかと人が疑います。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
永楽の時、史に曲筆多し、今いずくにかそのじつを知るを得ん。永楽簒奪さんだつして功を成す、しか聡明そうめい剛毅ごうきまつりごとす甚だ精、補佐ほさまた賢良多し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
両者は共にある程度まで、権利の簒奪さんだつを代表している。そしてあらゆる簒奪を掃蕩そうとうせんがためには、彼らをも打ち倒さなければならない。
大概は勇ましくまた殺伐な戦闘や簒奪さんだつ顛末てんまつであるが、それがただの歴史とはちがって、中にいろいろな対話が簡潔な含蓄のある筆で写されていたり
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けだし白人種の異人種を征服するは征服されるものから見れば領土の簒奪さんだつであるが、白人種の立場からいえば、人類の幸福のための未開の土地の開発であって
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
私は全ての選挙者と共に如何に群衆が常に簒奪さんだつせられ、利用せられつつあるかを知つてゐる。
少数と多数 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
主権簒奪さんだつの武将が兵馬をべ、政事上の力は一切その手にゆだねられていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ウイリアム征服王は外に法王の後援ありたるのみならず、内には従来簒奪さんだつ征服に慣れたる英国民が当時君主を渇望せし際なりしをもって、人民忽ちこれに附従し」と始めましたので、一同あきれ返り
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「ウイリアム征服王は外に法王の後援ありたるのみならず、内には従来簒奪さんだつ征服に慣れたる英国民が当時君主を渇望せし際なりしをもって、人民忽ちこれに附従し」と始めましたので、一同あきれ返り
法窓夜話:01 序 (新字新仮名) / 穂積重遠(著)
「漢室の社稷しゃしょくは今いよいよ危うく、曹操の驕暴きょうぼうは、日とともにつのりゆきます。おそらく、簒奪さんだつの逆意をあらわに示す日も遠くありますまい」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絶対の目よりすれば、二つの権利を、すなわち第一に人間の権利を第二に民衆の権利を外にしては、すべては簒奪さんだつとなる。
びょうたる一山僧の身をもって、燕王えんおうを勧めて簒奪さんだつあえてせしめ、定策決機ていさくけっき、皆みずから当り、しん天命を知る、なんぞ民意を問わん、というの豪懐ごうかいもって、天下を鼓動し簸盪ひとう
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
簒奪さんだつ、武力による各国民の競争、諸国王の結婚結合よりくる文化の障害、世襲的暴政を続ける王子の出生、会議による民衆の分割、王朝の崩壊による国家の分裂
前漢の朝位を簒奪さんだつした王莽おうもうを討って、再び治平をいた時代には、まだ民心にいわゆる「漢」の威徳が植えられていたものであるが、その後漢の治世も蜀帝、魏帝以降となっては
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわんや、大喪の期未だ終らざるに、無辜むこの民驚きを受く。仁を求め国をまもるの義と、逕庭けいていあるもまたはなはだし。大王に朝廷を粛清するの誠意おわすとも、天下に嫡統を簒奪さんだつするの批議無きにあらじ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
痛むべきかな、彼らが譲与と名づけたところのものは、実は吾人のなした征服であり、彼らが吾人の簒奪さんだつと呼んだところのものは、実は吾人の権利だったのである。
いたずらに乱を起こして天下の簒奪さんだつ目企もくろんでいるとは決して思っていない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)