端々はしはし)” の例文
そのうちでも一番よけいに来るのは、叔父の上花客じょうとくいになっている田舎の田地持ちである事が、言葉の端々はしはしでよくわかった。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
年齢としは同じほどでも女だけにませたことを云ったが、その言葉の端々はしはしにもこの怜悧りこうで、そしてこの児を育てている母の、分別のかしこい女であるということも現れた。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
容儀かたち人の娘とは見えず、妻とも見えず、しかも絢粲きらきらしう装飾よそほひかざれる様は色を売るたぐひにやと疑はれざるにはあらねど、言辞ものごし行儀の端々はしはしおのづからさにもあらざる、畢竟ひつきようこれ何者と
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
また眼の前に入用のない事物やことわざを覚え、一方にはまた人に耳を傾けさせる話術が進んで、国語の利用が国民の端々はしはしに行き渡ったのであるが、もちろんこれは庚申の信仰が
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
時にはわが語る言葉の端々はしはしびさまされて旧歓の哀情かなしみえやらず、貴嬢がこの姿をかき消すこともあれど、要するに哀れの少女おとめよとかこつ言葉は地震の夜の二郎にはあらず
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
世界がどうして出来て、どうして発展したか、人類がどうして出来て、どうして発展したかと云うことを、学問に手を出せば、どんな浅い学問の為方しかたをしても、何かの端々はしはしで考えさせられる。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
前者は人体の美しさの端々はしはしに神秘を見る。後者は宇宙人生の間に体得した神秘を、人の体に具体化しようとする。一は写実から出発して理想に達し、他は理想から出発して写実を利用するのです。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
故は、彼こそ父が不善の助手なれと、始より畜生視して、得べくばつて殺さんとも念ずるなりければ、今彼がことば端々はしはしに人がましき響あるを聞きて、いとあやしと思へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)