童形どうぎょう)” の例文
「よい、童形どうぎょうじゃ」慈円僧正は、しげしげと見入っていたが、卓に手をのばして、そこにある銅鈴を、しずかに振った。鈴の音を聞くと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源氏の乗った車が来た時、明石の君はきまり悪さに恋しい人をのぞくことができなかった。河原かわらの左大臣の例で童形どうぎょう儀仗ぎじょうの人を源氏は賜わっているのである。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
童形どうぎょうの馭者
まだ童形どうぎょうを持つ彼の野性は、人のはなしだけに知っている藤原氏全盛の宮廷や巷を予想して、もうそこへ立ち交じる日の羞恥はにかみにすら、動悸していた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
承香殿じょうきょうでんの女御を母にした第四親王がまだ童形どうぎょうで秋風楽をお舞いになったのがそれに続いての見物みものだった。この二つがよかった。あとのはもう何の舞も人の興味をかなかった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「ううむ、なるほどのう。官兵衛孝高に似て、童形どうぎょうながら、どこか違ったところが見える。たのもしい少年。——半兵衛、この上とも、いとしんで与えるがよい」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
童形どうぎょうである八郎君はちろうぎみは正妻から生まれた子で、非常に大事がられているのであったが、愛らしかった。大将の長男と並んでいるこの二人を尚侍も他人とは思えないで目がとどめられた。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「あれにたたずんでおる少年は、どこかで見たような気がする。引っ捕えてみい。異相の童形どうぎょう、不審である」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源氏の君の美しい童形どうぎょうをいつまでも変えたくないように帝は思召したのであったが、いよいよ十二のとしに元服をおさせになることになった。その式の準備も何も帝御自身でお指図さしずになった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
親王はやっと十二になったばかりの童形どうぎょうである。顕家は、兄のようにさとして言った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ童形どうぎょうでいる者の中できれいな顔の子を手もとへ使おうと思っていた。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「この端麗な童形どうぎょうを、あたら、りこぼちて、僧院へ入れたいと、仰せらるるか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮の御入内ごじゅだいの時に童形どうぎょう供奉ぐぶして以来知り合いの女房が多くて中将には親しみのある場所でもあった。源氏の挨拶あいさつを申し上げてから、宰相の君、内侍ないしなどもいるのを知って中将はしばらく話していた。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
で、蘭丸はなお、他の少年とけんを競い、まげ、小袖、すべて童形どうぎょうのままにしていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それでは、まだ童形どうぎょうでご修行あるはずの法規おきてでございます。古来からの山門の伝習をお破りあそばしては、恐れながら、一山のものが、不法を鳴らして、うるそう騒ぎはいたしませぬか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、日もたつにしたがって、彼女は、童形どうぎょう十三歳の新帝後村上をようして
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ童形どうぎょうをしている蘭丸なので、つい眼にだまされて子どもと見る。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)