窯場かまば)” の例文
栃木県益子ましこ窯場かまばで長らく土瓶どびん絵附えつけをしていた皆川マスというお婆さんのことは、既に多くの方々も知っておでの事と思います。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
瓦師かわらしは、帰化人の一観いっかんという唐人が担当していた。中国の焼法によるとかいう。その瓦焼の窯場かまばは湖畔にあって、夜も昼も、松薪まつまきのけむりを揚げていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにこし達磨だるまのことも言い添えておくべきでしょうか。木型きがたを用い、紙で作ります。この県の唯一の窯場かまば深谷ふかやであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
器用者の侯健こうけんは、やき物の窯場かまばも設けて、陶器すえものを焼きはじめ、武器の工廠こうしょうでは、連環れんかん馬鎧うまよろいからカギ鎗、葉鉄うすがねよろい、またあらゆる兵具を、日夜さかんに作っていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩谷堂いわやどう箪笥たんすの技の伝わる町、「四尺箪笥」と呼ぶものが昔の型であります。この国の唯一の窯場かまばとしては九戸くのへ郡の久慈くじがあります。白釉しろぐすり飴釉あめぐすりで片口だとか鉢だとかを焼きます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ふと見れば、窓はほのかな夜明けの光に染まりかけている。外の声は、きょう日本へ立つ五郎大夫を見送りに来てくれた窯場かまばの人たちであろう。勿論がやがやいう言葉はみな中国音である。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明石には明治始頃まで窯場かまばがあって、特に土瓶の製作がさかんでありました。例の山水を描いたものも見られます。惜しいことに仕事が絶えましたが、工人たちは今も生き残っているのです。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この本を所持していた者は、窯場かまばの職人頭をしている、依怙地者いこじもの
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茅葺かやぶきには様々な美しいのがあるし、瓦葺かわらぶきでも石州せきしゅう窯場かまばの赤屋根の如きは忘れられぬものではあるが、形の立派さではこの石屋根に比肩するものは他にあるまい。支那の強ささえ聯想れんそうされる。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
土採り山や、薪山まきやまや、無数の窯場かまばが、目の下に見える。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
壺屋つぼやは戦禍を免れたよし聞き及びましたが、仕事が無事に続くよう祈って止みません。何しても特色ある窯場かまばで、少くとも伝統を守っているものは、一つとして醜いものはありませんでした。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
無数の窯場かまばが今も各地に散在して、けむりを絶やしたことがないのです。そうしてこんなにも多く手工による窯場が現存している国は他にないでしょう。工人はまだ数えきれないほどいるのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)