いしぶみ)” の例文
舊藩の英主龜井公のいしぶみの前へ、中學校、小學校の庭へ、それから舊藩の文武の學校で津和野藩の人材が皆養成されたといふ養老館の跡へ。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
初君が古跡こせき寺泊てらどまりり、里俗りぞく初君屋敷やしきといふ。貞享ぢやうきやう元年釈門万元しやくもんまんげんしるすといふ初君が哥のいしぶみありしが、断破かけやぶれしを享和年間きやうわねんかん里入りじん重修ちようしうして今にそんせり。
社殿の横にいしぶみがあって、なかば雑草に蔽われていたが、その蔭に若い山伏が、さっきから膝を抱き首を垂れ、コクリコクリと居眠りをしていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やおら、生月駿三、ステッキを挙げて、いしぶみと、そしてその後の夏草に埋まる空井戸を指しました。
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
さてそれより塩竈しおがま神社にもうでて、もうこのつぼいしぶみ前を過ぎ、芭蕉ばしょうつじにつき、青葉の名城は日暮れたれば明日の見物となすべきつもりにて、知る人のもとに行きける。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、ほど遠からぬ所の松並木の下へ、無理やりにその門人を引っぱって来て一つのいしぶみを指した。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
在った一日は在ったままで時のいしぶみへ彫りつけられてしまう。眼には見えず形には遺らないけれど、親から子、子から孫へと、血とつながり心とつながって絶えるはてがない。
日本婦道記:桃の井戸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
初君が古跡こせき寺泊てらどまりり、里俗りぞく初君屋敷やしきといふ。貞享ぢやうきやう元年釈門万元しやくもんまんげんしるすといふ初君が哥のいしぶみありしが、断破かけやぶれしを享和年間きやうわねんかん里入りじん重修ちようしうして今にそんせり。
そうして、その武士の背後の地面から、こぶのように盛り上がっている古塚であった。その古塚は、数本の松と、一基のいしぶみとを、頂きに持っていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
旅舎やどの男だった。彼女のすがたをいしぶみのそばに見つけて、こういいながら走って来た。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春陽に浸っている道了塚は、その岩にも、南無妙法蓮華経とってあるいしぶみにも、岩の間にこめてある土壌つちにも、花弁や花粉やらがちりばめられていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
古塚のような形の、巨大な岩が、いしぶみと小松とをその頂きに持って、こぶのように立っているのであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)