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破隙
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われめ
衣服を剥がれたので
痩肱に
瘤を立てている
柿の
梢には
冷笑い顔の月が掛かり、青白く
冴えわたッた地面には
小枝の影が
破隙を作る。
魚沼郡清水村の
奥に山あり、高さ一里あまり、
周囲も一里あまり也。山中すべて大小の
破隙あるを以て山の名とす。
おもふに此山
半より上は岩を
骨として
肉の
土薄く
地脉気を
通じて
破隙をなすにや、天地妙々の
奇工思量べからず。
熊はいでずして一山の
破隙こゝかしこより
烟をいだして
雲の
起が
如くなりければ、
奇異のおもひをなし熊を
狩ずして
空しく立かへりしと清水村の
農夫が
語りぬ。