督励とくれい)” の例文
旧字:督勵
雁金検事は、書記を督励とくれいして、何か書類を繰らせていたが、僕の入ってきたのを見ると、つと室の隅に立って僕を手招きした。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「工匠の督励とくれいとて、容易とは思われませぬ。また石垣、木材などの数量も、おびただしいものでございましょうな」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心ある者よろしく挺身ていしん肉迫して叱咤しつた督励とくれいする所なかるべからず候。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
八丁堀たのむに足らず、家臣を督励とくれいしてもはかばかしくない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
平次はそれを督励とくれいして、否応いやおう言わさず部署につけました。
「海賊係りを督励とくれいし……」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
土着の煙火師ばかりが三十戸もあるこの戸狩村には、冬のころから、松代藩まつしろはんのお狼火方のろしかたの藩士が五人ほど出張して秋ぐちまでに作り上げる大仕事を督励とくれいしていた。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目賀野は臼井を督励とくれいして、四本の杉の角材を手にとるやら耳のところまで振ってみるやら、それから目方を考えてみるやらして、さまざまな診察を試みたが、その結果は
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一艘のみよしのへりに立って大工や人夫を督励とくれいしていた奉行らしい男は、それへ来た藤吉郎の列に気づくと
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
総数三十二ヵ所の監視所から常備の将士が督励とくれいにあたっていたが、単なる督励そのものでは、ありのごとく土をにな鋤鍬すきくわをふるっている数千の者に、何の拍車も加え得なかった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人で約四組から五組の督励とくれいに当り、組の仕事を指揮し、職人たちに手すきなきよう、絶えず人数の配りに気をつけ——職方の余裕あるところの者は、すぐ手不足の部署に移し、寸分
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉のすがたが見えても、ここの奉行や督励とくれいしている侍たちは、彼をふり返る者もない。また、何千の木工、土工、左官、石工いしく、あらゆる工匠たくみや人夫たちも、一顧いっこしているすきもなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家族の生活くらしも質素に改め、息子や雇人たちをも自身で督励とくれいして、きっと両三年の間には、借財しゃくざいも返すようにしてみせるから、どうか、彦兵衛どのに、慈悲と思うて、又むかしのよしみを思うて
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも工事の督励とくれいは急速を極めて、夜も日もあったものでなく、起工以来まだ一年にも満たないまに、湖畔こはんの一丘には大体その骨組を完成し、広茫こうぼうな桑田や畑は、新しい城下町と化していた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都に落着くと、信長は第一に、改修中の御所の工事を督励とくれいに行った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)