眼許めもと)” の例文
殿下は二十七歳、白晳はくせきひたい、亜麻色の髪涼やかに、長身の眼許めもと凜々りりしい独身の容姿は、全丁抹デンマーク乙女のあこがれの対象でいらせられる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
若いといっても三十にはなるであろう、輪郭の正しい切りそいだような頬と、やや眼尻の下った深い眼許めもとがきわだっている。
松風の門 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
年齢としよりは若く見える男で、背が高く、色が白く、眼許めもとに不思議な愛嬌のある、女のような優しい口をきく男でした。
与八が振向いた時、馬上の兵馬は御岳山の方を見やる眼許めもとよりしずくが頬を伝うて流れるのを見かけます。
うついた眼許めもとには、ほのかなべにして、びんが二すじすじ夢見ゆめみるようにほほみだれかかっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
色あくまでも白く、鼻がつんと高くて、眼許めもとすずしく、いかにもいい男だ。けれども少し爪先つまさき立っておしりを軽く振って歩く、あの歩き方だけは、やめたほうがよい。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
面長おもながの左の片頬かたほおから眼許めもとにかけて、見覚えのある親しい顔であるから、朝鮮の方へ往ってると聞いていたものではあるが、東京に来ていないとも限らないので、線路の外へ出るなり
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
……ときおり彼女の頬には涙の跡があったけれど、まゆにも眼許めもとにも、今は心の落着いた静かさがあふれている。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)