)” の例文
いつでも、びつけるような姿勢と、光る眼と、重厚にむすんだ唇とが、かぶとびさしの下から、前方をめあっているだけであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何者であるか更に想像は附かぬけれど確かに帽子を深に冠り、目には大きな目鏡を掛けて居た様に思われる、通例の人ではなく、他人に認められるを厭う人だと云う事は是だけで分って居る。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
緑子の頭巾深きいとほしみ
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
馬上、金瓢きんぴょうの下、かぶとのびさしに、かげって見える秀吉の眉にも、こんどは少し、むずかしい顔つきが見られた。年齢とし、このとき四十二。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
咫尺しせきも弁ぜずという濃霧である。ために、旗や馬印からも、兜のびさしからも小雨が降っているのと違わないほど、のべつぽたぽたとしずくが落ちていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
濃尾のあいだでは一矢も錦旗にむかってくるものはなく、十一月の寒烈はかぶとのびさしにあられを打ち、弓手も凍るばかりだったが、彼の頬にはたえず自負の信念か微笑かがあった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声があったかと思うまに、黒縅くろおどしに黒鉄くろがね鉢兜はちかぶとぶかにかぶった偉丈夫を見た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方の藤夜叉は、関明神のお旅所たびしょのうらに、かがまっていた。笠をぶかに沈め、竹の杖を両手に持って、石垣の下の石の一つに腰かけたまま、もう一歩もあるけないような呼吸をしていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)