白銀しろかね)” の例文
丘のすそをめぐるかやの穂は白銀しろかねのごとくひかり、その間から武蔵野むさしのにはあまり多くないはじの野生がその真紅の葉を点出てんしゅつしている。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
他なほ知らぬがほにて、「黄金殿か白銀しろかね殿か、われは一向親交ちかづきなし。くろがねを掘りに来給ふとも、この山にはあかがねも出はせじ」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
通稱は佐々木信綱さんに問ふに、大隅おほすみであつたさうであるが、此年の武鑑御弦師おんつるしもとには、五十俵白銀しろかね一丁目岸本能聲と云ふ人があるのみで、大隅の名は見えない。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
はるか向うには、白銀しろかねの一筋に眼を射る高野川をひらめかして、左右は燃えくずるるまでに濃く咲いた菜の花をべっとりとなすり着けた背景には薄紫うすむらさき遠山えんざん縹緲ひょうびょうのあなたにえがき出してある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さかひつはものも汝が翼を遮ることあるまじきぞ。その一裹は尊き神符にて、また打出の小槌なり。おのが寶を掘り出さんまで、事くことはあらじ。黄金も出づべし、白銀しろかねも出づべしといふ。
自分の姿をその白銀しろかねのような水面みのもに映してさめざめと泣いているのを見る。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
白銀しろかねの小川が黄金こがねの江に流れ入るのが見えよう。
水晶のをすげし白銀しろかねの鍬をもて
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
衣服きものを着るさえあわただしく、お絹お常の首のみ水より現われて白銀しろかねの波をかき分けおかへと游ぐをちょっと見やりしのみ、みちをかえて堤へのぼり左右にしげかやの間を足ばやに八幡宮の方へと急ぎぬ。
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)