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瘡痍
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きず
勘次は
彼の
輕微な
瘡痍を
假令表面だけでも
好いから
思ひ
切つて
重く
見てさうして
彼に
同情の
言葉を
惜まないものを
求めたが
手先の
火傷は
横頬のやうな
疼痛も
瘡痍もなかつたが
醫者は
其處にもざつと
繃帶をした。
與吉は
目ばかり
出して
大袈裟な
姿に
成つて
歸つて
來た。
彼は
家に
歸つた
後瘡痍を
重く
見せ
掛けようとするのには
醫者の
診斷が
寸毫も
彼に
味方して
居なかつたからである。