甃石しきいし)” の例文
軒の肘木ひじきや屋根裏もなかなか面白い。煉瓦れんが甃石しきいしもいいものだね。台湾に住めばこういううちに住みたくなるのが当然なんだがなあ。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
坂口は生れつきの気質から、賑かな市街を離れて、誰人に妨げられることもなく、黙々としてそうした甃石しきいしの上を歩くのが好きであった。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
街角の瓦斯燈の下では、青ざめた甃石しきいしの水溜りに、鉄の梯子はしごが映っていた。複合した暗い建物の下で、一軒の豆腐屋が戸を開けて起きていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
金を獲るには蟻が物を運ぶが如く、又点滴の雫が甃石しきいしに穴を穿つが如く根気よく細字を書くより外に道がない。
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼女自身はと言えば、インキの中に落ちた蠅のように、やっとのことで甃石しきいし道を這いながら、ラエーフスキイの脇腹や手を黒くよごしているような気がした。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼は甃石しきいしの上に私を降ろした。ジョンに馬を曳かせて、私に從つて廣間に這入ると彼は私に急いで何か乾いた物を着て書齋の彼の許へ歸つて來るやうにと云つた。
その道路の美しく甃石しきいしいてあるかたちや、建築物の高大な状などは言語に絶する。市全体は北と西の方へ広く伸び、端から端まで行くのに一日を費やさねばならぬ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
へえゝ……くろうまけましたな、成程なるほどらしい色で……れは。近江屋「彼家あれ宮松みやまつといふ茶屋ちややよ。梅「へえゝ……これは甃石しきいしでございませう。近江屋「おや/\よくわかつたね。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ともしびも雨にぬれたる甃石しきいしも君送る夜はあはれふかゝり
芥川竜之介歌集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
甃石しきいしにすてつきちたたき
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
絶間たえまなく甃石しきいししはぶけり
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
甃石しきいし亀裂さけている個所もあり、玄関へ上る石段の磨滅すりへっている家もあったが、何処の家にも前世紀の厳めしいポーチと、昔の記憶を塗込めた太い円柱まるばしらがあった。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
甃石しきいし道に突いて行く杖の音が、夜の静けさの中で高く淋しく響き渡るのに耳を澄ましながら、そう思った。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
甃石しきいしの上で銅貨を投げ合っていた車夫たちが参木の前へ馳けて来た。三つの黄包車ワンポウツが走り出した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
お思ひ出しになるでせう、よく晴れた日でした——大氣も空もおだやかで、あなたのお身の安全や旅の氣持のことなど何も氣遣きづかふことはないのでした。私はお茶の後少時しばらくの間甃石しきいしの上を歩きました。
都会の固たい甃石しきいしの下にも
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
甃石しきいしの上にいき
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)