理髪店とこや)” の例文
旧字:理髮店
小さいながらも呉服屋、菓子屋、雑貨店、さては荒物屋、理髪店とこや、豆腐屋まであつて、素朴な農民の需要は大抵此処ここで充される。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこで早速さつそく理髪店とこやつてそのみゝ根元ねもとからぷつりとつてもらひました。おもてへるとゆびさして、ふものごとわらふのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「どぶんと飛びこむわ、一、二、三、と、あ、わすれた、明日は理髪店とこやに行く日なのよ、お忘れにならないで、……」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
この男が長い煙管パイプを手に持って、茶碗からお茶を啜っている恰好は、理髪店とこやの看板みたいに髪をぴったり撫でつけたり、きれいにウエーヴをかけた紳士や
そこらじゅう一面にベタベタと花が咲いてね、まるで理髪店とこやの壁紙のように派手なことになっちまうんです。そのなかでまたうぐいすがのべつにピイチク・ピイチク鳴く。
僕は一木町と表町の丁字形になつて居る処まで来ると、理髪店とこやの前に大さう人が集まつて居ます。
夜の赤坂 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
店の装飾に斬新をほこる唐物屋や洋酒店の中には、半ば大戸を下した所も見えた。姿見を沢山かけ並べた理髪店とこやにははさみの音がひまさうに見えた。派手な誇張な看板に唯日が明るく射して居る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
その隣りが滝床たきどこ——滝床といっても理髪店とこやではない。小さな酒屋だ。
二人は右視左視とみかうみして、此家忘れてはなるものかと見廻してると、理髪店とこやの店からは四人の職人が皆二人の方を見て笑つてゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
理髪店とこやの言いなりになる阿呆があるか、此処にきちんと坐った。そしてタオルを膝にあてるのだ。」
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その恰好が、まるで理髪店とこやの絵看板によくある図そつくりであつた。イワン・フョードロヸッチは顔を赧らめながら、指定された席に、二人の令嬢と差し向ひに坐つた。
理髪店とこやの出店のような小綺麗な天幕テントの中で取り澄ましている海岸椅子ビーチ・チェヤ
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
『ええ、先刻せんこく菊坂の理髪店とこやだつてのが伴れて来ましたの。(お定を向いて)このかたが旦那様だから御挨拶しな。』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
理髪店とこやが刈っちゃったものを、どう言いへん。」
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
お定がまだちひさかつた頃は、此村に理髪店とこやといふものが無かつた。村の人達が其頃、頭の始末を奈何どうしてゐたものか、今になつて考へると、随分不便な思をしたものであらう。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『ナーニ、恰度アノ隣の理髪店とこやの嬶が、小宮の嬶と仲が悪いので、其麽事を云ひ触らしたに過ぎなかつたですよ。』と云つて、軽く「ハッハハ。」と笑つたが、其実渠は其噂を材料たね
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
鎌田といふ大臣のあるか無いかは理髪店とこやの亭主だつて知つてるぢやないか。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)