珠玉しゅぎょく)” の例文
いつでもおとそうと思う日に陥し得られるこの城だが、目的の珠玉しゅぎょくを、焼けあとの灰のなかに掻き探すようなへたをしてはならない。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……二三度、四五度、繰返すうちに、指にも、手にも、はては指環の緑碧紅黄りょくへきこうこう珠玉しゅぎょくの数にも、言ひやうのない悪臭あくしゅういきかかるやうに思はれたので。……
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
珠玉しゅぎょくまとう好みは、何だか近頃は毛皮の民族から学ぶようにも感じられるが、最初はどう考えてもはだかの国、暖かい海のほとりの社会に始まるべきものだった。『万葉集』の巻九に
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
珠玉しゅぎょくちりばめた翡翠色ひすいいろの王座にしょうじ、若し男性用の貞操帯というものがあったなら、僕は自らそれを締めてその鍵を、呉子女王の胸に懸け、常は淡紅色たんこうしょく垂幕たれまくへだてて遙かに三拝九拝し
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
じゃ、偶像は、かね乃至ないし、土。それを金銀、珠玉しゅぎょくで飾り、色彩をよそおったものに過ぎないと言うんですか。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
都へ移った楊志ようしは、さっそく持ち帰った荷をいて、地方であつめた珠玉しゅぎょく名硯めいけん、金銀の細工物など、とにかく金目な物を惜しみなく、大官たちへの賄賂わいろに使った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美しき虹を、そのまま柱にしてえがかれたる、十二光仏じゅうにこうぶつの微妙なる種々相しゅじゅそうは、一つ一つにしきの糸に白露しらつゆちりばめた如く、玲瓏れいろうとして珠玉しゅぎょくの中にあらわれて、清くあきらかに、しかもかすかなる幻である。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なぜならば、何たる因果か、王家の墳墓ふんぼといえば、ひつぎの中まで珠玉しゅぎょく珍宝ちんぽうを詰めこんでゆくものだから、秦朝の墳墓といい、漢室の墳墓といい、王妃の墓で発掘あばかれていないところはない位だ
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)