猫又ねこまた)” の例文
しまひには猫又ねこまたけた、めかけのやうに、いとうて、よるひるも、戸障子としやうじ雨戸あまどめたうへを、二ぢうぢう屏風びやうぶかこうて、一室ひとまどころに閉籠とぢこもつたきり、とひます……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
第四種(鳥獣編)妖鳥、怪獣、魚虫、火鳥、雷獣、老狐ろうこ九尾狐きゅうびのきつね白狐びゃっこ古狸ふるだぬき腹鼓はらつづみ妖獺ようだつ猫又ねこまた天狗てんぐ
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
余り久しく飼えば猫又ねこまたに化け「猫じゃ猫じゃとおっしゃりますな、アニャニャニャンノニャン」
もっとも課長は、今夜の行動を、役所の用事とはしないで、お化け鞄と猫又ねこまたに興味を持つ帆村荘六を援助するための特別行動である——と、彼の部下二名に説明してあった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なるほど踊りでもおどりそうな顔だ。奥さんこの猫は油断のならない相好そうごうですぜ。むかしの草双紙くさぞうしにある猫又ねこまたに似ていますよ」と勝手な事を言いながら、しきりに細君さいくんに話しかける。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
猫又ねこまたのゴシップの力で犬が猫又になる話や、ゴシップから鬼が生れて京洛けいらくをかけ廻る話などがそれである。現代の新聞のジャーナリズムは幾多の猫又を製造しまた帝都の真中に鬼を躍らせる。
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「田鍋さん。あの女はやっぱり猫又ねこまたを隠していたんですよ。そして博士の人形を作ったり、その他へんな装置をつけたりして、一体何をするのか、このへんで中へ踏込ふみこんだら、どうです」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
草双紙くさぞうしにある猫又ねこまたの血脈を受けておりはせぬかとみずから疑うくらいである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから普通では猫又ねこまたを見ようが腰を抜かす筈がない。だからそのときはおどろきましたよ、実に……なぜといってその仔猫がですね、ちゅうにふらふら浮いているじゃないですか、びっくりしましたね
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)