ふだ)” の例文
こういうふだがその老人の胸にかけてあった。物はためしであると思ったので、役人は彼をよび止めて相談すると、老人は訊いた。
そして其処で彼は、青繻子の上衣のだぶだぶな袖の中から一つの見事な象牙のふだを取り出して僕に示しながら、ぶつぶつと囁く様に云いました。
象牙の牌 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
あれ以来は、紅紙べにがみのおふだにお名前をしるし、朝夕お線香を上げて娘と拝んでおりました。ですから今日のご縁も、神仏の巡り合わせと思わずにおられません。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで祖父は自分のふだをそつと卓子の下へ匿して十字を切つた。と、どうだらう、持牌もちふだは切札のA牌ポイント王牌キング兵牌ジャツクで、彼がさきに打つたのは六ではなくて后牌クヰーンだつたのだ。
兎も角も一たび此場内にはぬちに入りて、美しき女優のおもを見ばや。若し興なくば、曲の終るを待たで出でんもさまたげあらじとおもひぬ。入場劵を買ふに、小き汚れたるふだを與へつ。
今井は、そういってテーブルの麻雀のふだをとり上げた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ひとりでふだを打つパシアンスのあそびの如く
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
致しける其七日の滿まんずる日の暮方くれがた山の上よりしてさつ吹下ふきおろす風に飄然と眼の前に吹落ふきおとす一枚のふだあり手に取て見るに立春りつしゆん大吉だいきち護摩祈祷ごまきたう守護しゆご可睡齋かすゐさいと記したれば三五郎は心に思ふやう彼の可睡齋かすゐさいと云ば東照宮とうせうぐうより御由緒ゆゐしよある寺にして當國の諸侯しよこうも御歸依寺也因ては可睡齋へ參り委曲くはしき事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
妖女ウェーヂマは自分の置いたふだを取りあげた。と、その下にあるのは普通牌なみふだの六だつた。
倭文子はいきなりさらしたふだの上へ顔を伏せた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)