熱気ねっき)” の例文
旧字:熱氣
熱気ねっきされた真赤な裸身らしんに疲労もらず、エンジンに全速力をあげさせ、ふかのように敏捷びんしょうな運動をあやつりながら、五度六度と、敵の艦底を潜航し
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
火はわらのべてゆくようにうつる。むーッとこもる熱気ねっき刻一刻こくいっこくにたかまる。そして、むせるそばから煙ははなにしみてふせぎようもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海の南風みなみかぜをうけている浜松の夏は、日盛りでもどこか磯風の通う涼しさがありましたが、夜は海の吐き出す熱気ねっきのために、却ってむし暑い時もあるのでした。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
「まあ待てよ、きみはいま昂奮こうふんしてるから、とにかく森のほうへでも行って熱気ねっきをさましてきたまえ、富士男君もそれまであまり追究ついきゅうせずにいてくれたまえ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ひどいねつが出て、はげしい寒けを感じた。わたしのむねの中は、小さなジョリクールがあのばん木の上でごしたとき受けたと同様、きつくやうな熱気ねっきを感じた。
その前に昨日きのうの花環が少ししぼみかけて、台の上に静かに横たわっていた。それが昨夜ゆうべ宵子の肉を焼いた熱気ねっき記念かたみのように思われるので、千代子は急に息苦しくなった。御坊おんぼうが三人出て来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)