漢口ハンカオ)” の例文
彩票や麻雀戯マアジャンの道具の間に西日の赤あかとさした砂利道。其処をひとり歩きながら、ふとヘルメット帽の庇の下に漢口ハンカオの夏を感じたのは、——
雑信一束 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
飛行機工場だって解体して、二百万弗もの機械や設備を、南京、漢口ハンカオと日本の爆撃にさらされながら持ち運び、漢口から一千マイルもある仏印国境まで移転したのだ。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
例えば「上海シャンハイ」の「海」はhai、「漢口ハンカオ」の漢はhanで、大体日本の現代のハの音と同じです。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
「では、さっそくはじめます。……久我さん、あなたは昭和二年の春、漢口ハンカオで開かれた汎太平洋労働会議に派遣されたまま、今日まで行衛不明になっていた岩船重吉いわふねじゅうきちさんでしょう」
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
黄浦河を下り呉淞ウースンへ出、それから西して揚子江をさかのぼり、鎮江チンキャン南京ナンキン蕪湖ウーフー九江キューキャン漢口ハンカオ岳州ヨウチョウ沙市シャシあたりへまで、旅行をしなければならなかったので、大いに勇気づいていたのでした。
ところが漢口ハンカオでは大いに信用をおとしたよ。主人公が頻りに首を傾げているから通訳に訊いて見ると、この間来た日本の大官もこの詩を書いて行ったというのさ。悪いことは出来ないもんだね。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私は溯江そこうの汽船へ三艘乗った。上海から蕪湖までは鳳陽丸、蕪湖から九江キュウキャンまでは南陽丸、九江から漢口ハンカオまでは大安丸である。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
妙子は漢口ハンカオへ行ったのちも、時々達雄を思い出すのですね。のみならずしまいには夫よりも実は達雄を愛していたと考えるようになるのですね。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いですか? 妙子を囲んでいるのは寂しい漢口ハンカオの風景ですよ。あのとう崔顥さいこうの詩に「晴川歴歴せいせんれきれき漢陽樹かんようじゅ 芳草萋萋ほうそうせいせい鸚鵡洲おうむしゅう
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
南陽丸の船長竹内氏の話に、漢口ハンカオのバンドを歩いていたら、篠懸すずかけの並木の下のベンチに、英吉利イギリスだか亜米利加だかの船乗が、日本の女と坐っていた。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そののち二月ふたつきとたたないうちに、突然官命を受けた夫は支那しな漢口ハンカオの領事館へ赴任ふにんすることになるのです。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
けれどもそれは不幸にも彼が漢口ハンカオへ向ふ為に旅館を出てしまつたところだつた。彼女は妙に寂しさを覚え、やむを得ず又人力車に乗つて砂埃すなほこりの中を帰つて行つた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕は大阪毎日新聞社の命を受け、大正十年三月下旬から同年七月上旬に至る一百二十余日のかん上海シャンハイ南京ナンキン九江キュウキャン漢口ハンカオ長沙ちょうさ洛陽らくよう北京ペキン大同だいどう天津てんしん等を遍歴した。
「支那游記」自序 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし今は日本に、——炎暑の甚しい東京に汪洋おうようたる長江を懐しがっている。長江を? ——いや、長江ばかりではない、蕪湖ウウフウを、漢口ハンカオを、廬山ろざんの松を、洞庭どうていの波を懐しがっている。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「では漢口ハンカオへ電報を打ってヘンリイ・バレットの脚を取り寄せよう。」
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「今調べたところによると、急に漢口ハンカオへ出かけたようです。」
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)