消々きえぎえ)” の例文
胸の隅々くまぐまに、まだその白いはだ消々きえぎえに、うっすらと雪をかついで残りながら、細々と枝を組んで、肋骨あばらぼねが透いて見えた。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々光を、幅広くほとばしらして、かッと明るくなると、燭台しょくだい引掛ひっかけた羽織の袂が、すっと映る。そのかわり、じっと沈んで暗くなると、紺の縦縞が消々きえぎえになる。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竜巻がまだ真暗まっくらな、雲の下へ、浴衣の袖、裾、消々きえぎえに、冥土めいどのように追立てられる女たちの、これはひとり、白鷺しらさぎひなかとも見紛みまごうた、世にも美しい娘なんです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
段々孤家ひとつやの軒が暗くなって、鉄板で張ったようなひさしが、上から圧伏おっぷせるかと思われます……そのまま地獄の底へ落ちてくかと、心も消々きえぎえとなりながら、ああ、して見ると
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これはまた学問をしなそうな兄哥あにいが、二七講の景気づけに、縁日のは縁起を祝って、御堂一室処ひとまどころで、三宝を据えて、頼母子たのもしを営む、……世話方で居残ると……お燈明の消々きえぎえ
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
も言はれぬ其の餅を含んだ、こころ消々きえぎえと成る。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じっとみまもれば心も消々きえぎえになりぬ。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)