浮々うきうき)” の例文
その人気女優が、昔々の幼い恋の相手であったと分ると、厭人病者の彼も、少しばかり浮々うきうきして、彼女が懐しいものに思われて来るのであった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
本来ならばもう少し浮々うきうきしてもよかるべきところを、見受けるところ先生のおもてには一抹の憂色があって、トホンとした中にも何処どこか屈託あり気な様子が見える。
今までの陽気な浮々うきうきした考えに、だんだん暗い影がさし始めた。彼女は思った——この眼の前に坐っている男は、私が思いを寄せていたことを知っているのだ。
女中達の証言によれば、志津子夫人は喜び勇んで展望台に飛出し、千束守の口ずさむ伊太利イタリーの歌を聴き乍ら、浮々うきうきとした心持で絵筆を走らせて居たということです。
金造 それがさ、今の様子では浮々うきうきと、嬉しそうにしているが、あれで一人になると鬱陶うっとうしい顔をして、どこを見詰めているのか、じっと眼を据えて、涙ぐんでいるんだとよ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
身も心も浮々うきうきしていて、普段ふだん音痴おんちのぼくでも、ひどく音楽的になれたのでしょう。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
一年ぶりで兄に会えると思うと、みどりはもう心も浮々うきうきとして来るのだった。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
浮々うきうきとした顔はせず……三味線さみせん聞こうとおっしゃれば、鼻のさきで笑うたげな。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
他人の中へ出て、いよいよ一本立ちとなった場合、どういう結果になるものか、どうか、まだ、今日の場合、浮々うきうきと配偶者のことなどに係わっていることは出来ないという考えであったのでした。
無論私自身の心がこの言葉に反響するように、飛び立つ嬉しさをもっていなかったのが、一つの源因げんいんであった。けれども先生のいい方も決して私のうれしさをそそ浮々うきうきした調子を帯びていなかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の調子が浮々うきうきしたのに合せて、隣人も笑を声に出したのであった。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
さも浮々うきうきと、そんなことを受合いながらも、一つには、いい年をしたじいさんが、こうして、十八の小娘に夢中になっているかと思うと、消えて了いい程恥しく、一こと物を云ったあとでは
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
浮々うきうきとその日その日を遊び暮しているばかりで、取り止めたかんがえというものは何ひとつ持っていないのに、養子はとにかく学問にも実社会の問題にも多少の理解は持っていて、同じ新聞を読むにしても
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
そのためだけでも浮々うきうきみんなむかえるのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ぼくは浮々うきうきたのしかったのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)