しゃ)” の例文
「やあ、それはわが輩から盗み取った名馬烏騅うすい太々ふてぶてしい盗賊めが。よくもしゃしゃアと出て来おッたな。覚悟しろ、人民の敵」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しょうしゃな二階屋があったり、細い粋な露地があったりして、何となくそぞろ心をすかされるようなところだった。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「えゝ。今月に入ってから三千円ばかり引っかゝっています。今晩あたりは御機嫌が悪いでしょう。『第一、手前のしゃつらが気に入らない』なんて来るんですから、曲った時は難儀をします」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ウッフ、さてはご存知か」しゃしゃアとして寄って来る。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
後醍醐のちょうに、ひとつであった公卿すべてが、流竄るざん、断罪に処せられぬはない中で、どうしてか彼だけは、新しい光厳帝にまみえ、花園院にも出入りして、しゃア洒アと
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれからのち——どこをどうんで歩きまわっていたか、あいかわらず、のんきのしゃアな顔をして、泣き虫の蛾次郎。南蛮寺の屋根の上から、小手こてをかざしてひとりごと……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この汚穢おわいだらけな地面の上に、気をうしなって寝ていたかと思うと、いくらしゃアつくな蛾次郎でも、さすがにすこしあさましくなって、今朝けさ寝起ねおきは、あまりいい気持でなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうどそれとおなじように、のんきのしゃアな顔をして、またぞろ、裾野へいもどってきた泣き虫の蛾次郎がじろうはばかにいい身分になったような顔をして、あっちこっちを、のこのこと歩いていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よくも、しゃあ洒あと。あるだけでも出せ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、しゃア洒アと言った。