泥草鞋どろわらじ)” の例文
あの合爾合カルカの——あの合爾合カルカの眼を見た時、おれという人間が、この成吉思汗ジンギスカンという男が、泥草鞋どろわらじのように汚く見えたのだ。
長い爪があったという者がある——いや、なんだか、俺の頭の上を通ったのは泥草鞋どろわらじのようだったという者もある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
泥草鞋どろわらじなどの跡が乱れているので、その当時の状況を判断するについて、はなはだしい不便を与えるのであった。
鴛鴦鏡 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
汚れた萌黄もえぎ裁着たッつけに、泥草鞋どろわらじの乾いたほこりも、かすみが麦にかかるよう、こころざして何処どこく。はやその太鼓を打留うちやめて、急足いそぎあしに近づいた。いずれも子獅子の角兵衛かくべえ大小だいしょう
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気の毒であるのみならず、この時に、どこからともなく泥草鞋どろわらじが片一方、米友の面上を望んで降って来ました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蝙蝠を捕えるには泥草鞋どろわらじを投げるがよいということになっているので、往来に落ちている草鞋や馬のくつを拾って来て、「こうもり来い」と呼びながら投げ付ける。
薬前薬後 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
砂山をあわただしく一文字に駈けて、こなたがちかづいた時、どうしたのか、脱ぎ捨てたはかま、着物、脚絆きゃはん、海草のからびたさまの、あらゆる記念かたみと一緒に、太鼓も泥草鞋どろわらじひとまとめにひっかかえて、大きなかれ
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蝙蝠を捕えるには泥草鞋どろわらじを投げるがよいと云うことになっているので、往来に落ちている草鞋や馬のくつを拾って来て、「こうもり来い。」と呼びながら投げ付ける。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)