)” の例文
秋ながらうっとりと雲立ち迷い、海はまっ黒にひそみたり。大気は恐ろしく静まりて、一陣の風なく、一だに動かず、見渡す限り海に帆影はんえい絶えつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
さるをかくごとくなるに至りし所以ゆえんは、天意か人為かはいざ知らず、一動いて万波動き、不可思議の事の重畳ちょうじょう連続して、其の狂濤きょうとうは四年の間の天地を震撼しんかん
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また一はなはだしい動揺と共にふなばたと舷とが強く打ち合って、更に横さまに大揺れに揺れました。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
あいのような刀身からチカッと一の光もよじれぬほど、静かに、それを持ちこたえているのは法月弦之丞であって、そのさき行燈あんどんの向うに、息づまったように坐っているのは川長のお米であった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)