沓下くつした)” の例文
或る者は長靴を脱いでさかさまにして、一杯たまった砂や泥水を吐かせたり、沓下くつしたを脱いで白くふやけた自分の足をつめたりしている。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
人通りが馬鹿に多いけれど、パンツも沓下くつしたもステテコもなかなか売れそうにもない。オッカサンは下谷までお使い。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
足袋たび沓下くつしたは息子の穿き古しよりしか穿かなかったことや、後のものに迷惑でもかけるといけないと言って、どうしても後妻の籍を入れさせなかったことや、多少
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
昨夜眺めた泥溝どろどぶの上には、石炭を積んだ荷舟が、黒い帆を上げたまま停っていた。その舟の動かぬ舵や、道から露出した鉄管には、藁屑や沓下くつしたや、果実の皮がひっかかって溜っていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
けれどもしきいまたときに、片方かたほう上沓うわぐつげたので、片足かたあしには、上沓うわぐつ穿き、片足かたあしは、沓下くつしただけで、前垂まえだれけ、片手かたてには、黄金きんくさり片手かたてには、ヤットコをって、まちなか跳出とびだしました。
(小田島ばかりはこういう時の礼儀を知らぬ東洋人であると、しらばくれて居られる特権がある。)彼女が捲った膝のくびれが沓下くつしたの端を風鈴草の花のようにり返らせ
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)