気取きどり)” の例文
旧字:氣取
女の大学生がまげを包んだリボンと同じ色の長い薄手の外套を着て、瀟洒せうしやとした所に素直な気取きどりを見せたのは一寸ちよつと心憎い様に思はれる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
首環くびだまかじり着いて、頬杖して、ふと思い着いて、「恩愛雪の乳貰ちもらい」という気取きどり、わざと浮かぬつらをしている処へ、くだんの半札がさて早であった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何でもないのに不良気取きどりのが居る一方に、不良の方でも研究して、そう見られまいとするからとてもわからない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
パンの破片かけら紙屑かみくずうしほねなど、そうしてさむさふるえながら、猶太語エヴレイごで、早言はやことうたうようにしゃべす、大方おおかた開店かいてんでもした気取きどりなにかを吹聴ふいちょうしているのであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二葉亭を何といったらかろう。小説家型というものをあながち青瓢箪的のヒョロヒョロ男と限らないでも二葉亭は小説家型ではなかった。文人風の洒脱しゃだつな風流通人つうじん気取きどり嫌味いやみ肌合はだあいもなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
着て、見栄も気取きどりもなくブッ倒れているじゃありませんか
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
マリネッティイ氏等は余りに英雄主義者である、余りに天才気取きどりである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
柔和やわらかなちっとも気取きどりっけのない四十ぐらいな——後で聞くと主人だそうで——質素な男が出迎えて、揉手もみでをしながら、御逗留ごとうりゅうか、それともちょっと御入浴で、といた時、客が、一晩お世話に
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)