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母様
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おつかさん
私は
其時分は
何にも
知らないで
居たけれども、
母様と
二人ぐらしは、この
橋銭で
立つて
行つたので、
一人前幾于宛取つて
渡しました。
ね、
母様、あのお
邸の
坊ちんの
青だの、
紫だの
交つた、
着物より、
花の
方がうつくしいつて、さういふのね。だもの、
先生なんざ。
これお
長、
母様のいふ事も
兄様のおつしやる事もお前は
合点が
行かないかい、
狂気の
様な娘を持つた
私や
何といふ因果であらうね。
決して
違つたことではない、トさう
思つてるのに、
先生のは、まるで
母様のと
違つたこといふんだから
心服はされないぢやありませんか。