此家うち)” の例文
道子はすがれるあねたもとを引き動かしつつ「あたしうれしいわ、姉さまはもうこれからいつまでも此家うちにいるのね。お道具もすっかり来てよ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
此家うちでは賓客きやくかへつたあとと見えまして、主人あるじみせ片付かたづけさせて指図さしづいたしてりますところへ、おもてからこゑけますから、主
「そうかい、此家うちは広いから、また迷児まいごにでもなってると悪い、可愛い坊ちゃんなんだから。」とぴたりと帯に手を当てると、帯しめの金金具きんかなぐが、指の中でパチリと鳴る。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々は甘えて煙草をくれと云う。此家うちではまぬと云っても、忘れてはまた煙草をくれと云う。正直の仙さんは一剋いっこくで向張りが強く、智慧者ちえしゃの安さんは狡獪ずるくてやわらかな皮をかぶって居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「お気の毒だがね、此家うちは駄目よ」
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「養生には逗子ずしがいいですよ。実家さとでは子供もいますし、実家さとで養生さすくらいなら此家うちの方がよっぽどましですからね」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「そりゃそうと此家うち姫様ひいさまは何のばけたのだろう。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此家うちの水はそれは好い水で、演習行軍に来る兵隊なぞもほめて飲む、と得意になつて吹聴ふいちやうしたが、其れは赤子の時から飲み馴れたせいで、大した水でもなかつた。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)