櫓柄ろづか)” の例文
「捕るなら腕で来い」といったスゴイ調子で南鮮沿海を荒しまわる事五年間……せがれの友太郎も十歳とおの年から櫓柄ろづかに掴まって玄海の荒浪を押し切った。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
呼ぶこえ、おと。船のなかにはひとりの若い漁師りょうしが、櫓柄ろづかをにぎって、屏風びょうぶのような絶壁ぜっぺきをふりあおいでくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実に見せたかッたね、その疲曳よぼよぼ盲者めくらがいざとッて櫓柄ろづかを取ると、仡然しゃっきりとしたものだ、まるで別人さね。なるほどこれはそのみちに達したものだ、と僕はおもッた。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十四五年も前の事だ、白髪だらけの正直万作、其頃はまだ隻手かたて櫓柄ろづかあげおろす五十男で、漁もすれば作も少しはする。稼ぐに追付く貧乏もないが、貧乏はただ子のないのが是れ一つ。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
船頭せんどうは空船のともをおして、砂地から海のなかへ突きだした。そして呂宋兵衛るそんべえ卜斎ぼくさいのふたりを乗せるやいな、勢いよく櫓柄ろづかをとって、沖の親船へぎだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血だらけの櫓柄ろづかを洗って、へそに引っかけると水舟のまま漕ぎ戻して、そこいらのブクブク連中をアラカタふなべりの周囲に取付かせてしまったので、とりあえずホッとしたもんだ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
乗合のりあいは悲鳴してうち騒ぎぬ。八人の船子ふなこかい無き櫓柄ろづかすがりて
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
阮小五は、櫓柄ろづかを片手に、けらけら笑った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)