権三ごんざ)” の例文
旧字:權三
やがて申刻ななつ少し前、この化物屋敷の興行元、とどろき権三ごんざは黒羽二重の紋付に、長いのを一本落して、蘭塔場の舞台にツイと出ました。
といったのは前棒さきぼうの駕籠屋。偶然にも、その駕籠をかついで行く権三ごんざ助十すけじゅうは、あのとき机竜之助を乗せた二人であるらしい。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おらあおし大蔵だいぞうの弟分、大蔵が消えたあと、放免頭となったおし権三ごんざだ。おめえたち夫婦ふたりの面あ、藤井寺のとき、この眼の奥におさめてある。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
答 水滸伝すゐこでんでも、やり権三ごんざでも、皆事件を主にして居る。しかし矢張やはり東洋的である。ゲエテの「さ迷へる人の歌」のやうなものは、心境を主として居る。しかし矢張り西洋的である。
東西問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
向島むかうじま武蔵屋むさしや落語らくごくわい権三ごんざますと、四方よも大人うしふでにみしらせ、おのれ焉馬えんば判者はんじやになれよと、狂歌きやうかの友どち一ぴやく余人よにん戯作げさくの口を開けば、遠からん者は長崎ながさきから強飯こはめしはなし、近くば
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
むかし権三ごんざは油壺。鰊蔵にしんぐらから出たよな男に、爺さんは、きょとんとする。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふンと笑っただけで、わるいもせぬ大蔵が、権三ごんざには変に小気味がわるい。こんな筈はないのである。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八——、だいぶ前の事だが、花川戸の近江屋おうみやの娘が、とどろき権三ごんざという香具師やし誘拐かどわかされ、幽霊の見世物にされて殺されかけた事があったが、覚えているだろうな」(「幽霊にされた女」参照)
這囘このたび向島むかうじま武蔵屋むさしやおいて、昔話むかしばなしくわい権三ごんざりやす」
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
槍の権三ごんざい男
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その日、彼らの屋敷へも、ここへ見えた六波羅筋らしき武士が立ち廻って、そこでは露骨に、卯木夫婦のことや、おし権三ごんざに危害を加えた者の詮議だてなど、洩らしていたというのである。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東両国に小屋を出した目吉めきちの化物屋敷と、変死人見世物は、年代記物になるほどの人気を呼びましたが、奥山の化物屋敷は、それよりずっと前で、興行元はとどろき権三ごんざ、四十そこそこの浪人者上がり
「なんだ、権三ごんざじゃねえか。ええい、人をびッくりさせやがる」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「放免の権三ごんざでございますが」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)